ランニングと気温の関係について考える【なぜ真夏に走るのがNGなのか】
真夏になり気温が30℃を超えるような環境でも、汗を流しながらランニングしている人がいます。そういう環境で走ることで何かを得ているのかもしれませんが、走力の向上を考えたとき、30℃を超えるような環境で走ることに意味はないどことか、むしろ逆効果にしかなりません。
苦しさに耐えれば耐えるほど成長できるなんていうのはTVアニメの世界で、本当にレベルアップしたいのであれば、正しい方法で成長する必要があります。そのときに「気温」というのはとても重要なキーワードになります。そこで、今回はランニングと気温の関係についてお伝えしていこうと思います。
目次
気温が1℃上がると心拍数が1BPM上がる
マラソンを走るとき、最適な気温というのがあります。それが10〜15℃くらいで、これくらい気温が低いほうが記録が出やすく、反対に気温が25℃を超えるような大会で世界記録が更新されるようなことはありませんし、自己ベスト更新もまず無理です。
その理由としては、気温が上がると心拍数が上がってしまうことが挙げられます。大雑把にいえば、気温が1℃上がると心拍数が1BPM上がります。10℃と25℃では気温が15℃違いますので、心拍数も15BPM変わってきます。たった15BPMと思うかもしれませんが、ランニングにおいて15BPMは決して小さな数字ではありません。
わたしたちはそれぞれに最大心拍数が決まっており、算出方法はいくつかありますが、次のような式が簡易的に使われています。
最大心拍数=220 − 年齢
年齢が40歳なら180が最大心拍数ということになります。もちろん個人差がありますが、この最大心拍数は「これ以上増やせない心拍数」であり、通常時の心拍数から最大心拍数までの間が、私たちランナーに与えられたバッファーになります。
例えば気温が10℃において、ジョグをしたときに心拍数が140BPMだったとします。最大心拍数が180だとすれば、あと40BPMほどの猶予があります。ところが同じ感覚でジョグをしていても、気温が25℃なら心拍数は155BPMになります。バッファーは25BPMしかありません。
ペースをちょっと上げただけで最大心拍数に到達して走れなくなるのは、容易に想像できるかと思います。
気温が高いと体内の熱を逃せなくなる
私たちランナーは走ることで体温が上昇します。気温が低いときには外気が身体を冷やしてくれますが、気温が上昇して体温に近い温度にまでなると、外気ではほとんど冷やせなくなります。このため、汗をかいて身体を冷やそうとしますが、体内の水分が減るのできちんと補わないと、脱水症状になります。
さらに水分だけでなく電解質も流れ出しており、きちんと塩分補給も行わないと体内の塩分が不足して筋肉が痙攣を起こします。ここで止めればまだいいのですが、ランナーはついつい頑張ってしまう傾向にあり、「まだ走れる」なんて踏ん張ってしまうと、体温がさらに上昇を続けて、脳の機能が低下して倒れてしまうこともあります。
これに関しては、適切なタイミングで適切な量の水分補給をすることで、ある程度防ぐことができますが、そうは言っても体内に吸収できる水分の量にも限度があります。水分が足りなくなって、水分補給をしたところで水分が胃に溜まっているだけで体内に取り込めないで脱水症状を引き起こすこともあります。
気温が10〜15℃くらいであれば、走っているだけで程よく身体が冷却され、水分補給も最小限で済みます。でも真夏になるとかなりこまめに水分補給をしないと、どこかで必ず破綻します。体温が上がりすぎると、身体が運動を止めさせようをするため、パフォーマンスも落ちてしまいます。
そういう状態でポイント練習などをしても、質の低いトレーニングを積み重ねるだけで、それに対する効果を期待できません。それで付くのは走力ではなく根性だけです。根性で走りきれるほどマラソンは甘くありません。
人間の身体は40℃でオールアウトするようにできている
インフルエンザなどにかかると体温が39℃くらいまで上がることがありますが、40℃になったという話はあまり効きません。光熱になればなるほどウイルスを殺すことができますが、残念ながら人間の体がそもそも高温には耐えられません。
最高に耐えられて42℃までで、それ以上にまで上がると不可逆的な変化が発生しはじめます。もちろん空気が42℃まで上がっても耐えることはできますが、人間の体の仕組みとして、それほど高く上がらないようにできています。
でも夏場に気温が35℃を超えるようなことがあります。この場合には、外気で身体を冷やすことができないので、運動によって発生した熱がどんどんと身体に溜まっていきます。ただ、人間の体には様々なセンサーがあり、体温が40℃を超えるとオールアウトするようにできています。
35℃の気温の中でランニングをすれば、体温が40℃くらいには簡単に上昇します。反対に気温が10℃で体温を40℃に上げるのは至難の業です。気温が10℃ですと体温のせいでオールアウトするなんてことはありませんが、30℃を超えていればすぐにリミッターがかかります。
そのことを理解せずに、気合と根性だけで乗り切ろうとする人もいます。それはムダに身体に負荷をかけているだけで成長どころかケガを招いてレベルダウンするだけです。きちんと身体の限界を理解した上でトレーニングメニューを組みましょう。
まとめ
夏でも頑張れば速く走れる。それを全否定するつもりはありませんが、暑い気温の中で走り続けても得られるものはほとんどありません。夏場に走りたければ、早朝の涼しい時間を選びましょう。気温が25℃を超えるようであればポイント練習をやめ、気温が30℃を超えるようであればジョグもやめておきましょう。
そもそもマラソンは冬のスポーツです。暑さに耐えられるようになったところで、冬のレースでは何も役に立ちません。その暑さへの耐性だってひと冬で消えてなくなります。簡単に折れない心を手に入れることはできるかもしれませんが、身体は間違いなく壊れてしまいます。
自分だけは大丈夫なんてことはありません。走りに行くときは必ず気温をチェックして、無理のない練習メニューを組みましょう。30℃を超える気温なら、エアコンの効いた室内でスクワットをするほうが効果的です。努力の方向性を間違えないように気をつけましょう。