ランニング後にクールダウンをしなくてもいい理由
ンニングをしたあとに、ストレッチなどでクールダウンをしている人も多いかと思います。そのような人に聞きたいのですが、「それって本当に効果ありますか?」。運動後にはクールダウンをするものだと思い込んでいる人もいるようですが、おそらく想像しているよりも効果はありません。
むしろ最新の研究では、悪影響を与える可能性があるとまで言われています。「でもトップアスリートもやってるよ」と思うかもしれませんが、トップアスリートが必ずしも科学的エビデンスに基づいて体のケアをしているとは限りません。これまで継続してきたから続けているというケースも多々あります。そこで、今回はクールダウンの必要性について、論理的に解説していきたいと思います。
目次
クールダウンが必要だと言われてきた理由
そもそもクールダウンはなぜ必要だとされてきたのか。それはストレッチやジョグなどによって、運動時に発生した乳酸を早期に取り除くことができるためです。だったら意味がありそうですが、これは乳酸が疲労物質で不要なものだと考えられてきた時代の思想になります。
現在では乳酸は疲労物質ではなく、むしろエネルギーになることがわかっており、クールダウンで乳酸を減らすことにメリットがないことがわかっています。
クールダウンすることで、脳の疲労が軽減されるとも言われてきましたが、こちらもクールダウンをしたところで、脳の疲労が回復したというエビデンスはなく、ジョグやストレッチをしても脳の疲労回復にかかる時間は変わりません。
固まった筋肉をほぐすのにもクールダウンが役立つとされていますが、残念ながらクールダウンが筋肉をほぐすこともなければ、可動域を広げることもできません。すべては「思い込み」でしかなかったわけです。
でもコーチは「クールダウンをしろ」と言います。従う必要はありません。根拠もなくただの思いこみでしかありませんから。もちろん、自分がクールダウンのメリットを感じているなら、無理にやめる必要はありませんが。
クールダウンはグリコーゲンを消耗する
ランニングは体内のグリコーゲンと体脂肪をエネルギーにします。グリコーゲンがなくなると体脂肪が残っていても走れなくなります。走れないなら休めばいいだけなのですが、最大の問題は脳にエネルギーを届けられなくなるということです。
フルマラソンを走った翌日は、頭が回らなくて仕事にならないという経験をしたこともあるかと思いますが、グリコーゲンがないと脳が働かず判断力が鈍ります。ランニング後はグリコーゲンが減少している状態なのに、クールダウンで走ったらどうなるか。
当然さらにグリコーゲンを使うので、完全に枯渇した状態になります。そうなると回復が遅れてしまうわけです。ランナーが走った後にしなくてはいけないのは、クールダウンのジョグではなく糖分の摂取です。できるだけ速やかに糖分を摂るようにしましょう。
どうしてもジョグをしたいなら、エナジージェルなどで補給しながら行いましょう。
ストレッチは筋肉痛を軽減してはくれない
走った後にストレッチを行えば、翌日の筋肉痛が軽くなると言われていますが、本当に軽くなっていますか?追い込む練習や勝負レースの翌日は、ストレッチをしても筋肉痛になっていますよね。「ストレッチをしてなかったらもっとひどかった」と反論するかもしれませんが、科学的にはそんなことはありえません。
トレーニングやレース後に筋肉痛を緩和させるためのストレッチにほとんど効果がないことは、すでに様々な研究でわかっています。ストレッチそのものに意味がないのではありません。速く走るためにも、ケガをしないためにも柔軟性は重要ですが、走った後に必要なのは休息です。
そもそも遅発性の筋肉痛が発生するメカニズムは、まだわかっていないことが多い状態にあります。なぜ発生するのかわからないのに「ストレッチをすれば改善される」と考えるのは少し乱暴すぎます。まったく意味がないとは言いませんが、絶対に必要なことでもありません。
ランニング後はストレッチをするよりも、できるだけ速やかに着替えて身体を冷やさないようにしてください。ストレッチをするのは自由ですが、間違っても走った格好のままストレッチをすることのないようにしてください。
クールダウンをしなくても体温は下がる
クールダウンはその名前の通り、心拍数を下げランニングで上昇した体温を下げる効果があるとされていますが、クールダウンをしなくても心拍数も体温も自然に下がります。心拍数はクールダウンをしたほうが下がりやすいという結果がありますが、身体を動かさず呼吸を整えても同じ効果が得られるはずです。
体温を下げる効果に関してはエビデンスがなく、むしろクールダウンをしてもしなくても変わらないというレポートのほうが多い状況です。そもそも体温は身体を動かすから下るわけで、クールダウンをしても、休んでいる状態よりも早く体温を下げられる理屈がありません。
それよりもスポーツドリンクでも飲んで、体内の水分を回復させたほうが体温が早く下がります。走り終えたら、できるだけ早く水分補給を行ってください。水分補給もせずにクールダウンをしても、身体に熱がこもるだけです。
まとめ
クールダウンが習慣化していると、いまさら「意味がない」と言われてもやめられないかと思います。そういう人までクールダウンをやめるべきとは言いませんが、何のためにやっているのかよく考えるようにしましょう。
クールダウンを行っても筋肉痛は和らぎませんし、体内のグリコーゲンを消耗するだけです。回復を早めたいなら、走り終えたらすぐに栄養補給を行い、暖かい格好に着替えてしっかりと休養を取るようにしましょう。もちろん睡眠時間もきちんと確保しましょう。
強いランナーになりたければ、自分の行うことのすべてに意味を持たせてください。ウォーミングアップもクールダウンもなぜそれを行うのか考え、きちんとエビデンスを確認してから実行しましょう。「トップアスリートがやっている」はエビデンスにはなりません。
人のマネをして速く走れるようになるほど、マラソンは甘くありません。特別な才能がないのであれば、科学的に正しいとされることを淡々と実行する(もしくは意味のないことをしない)。これが走力アップするための唯一の近道です。