ゆっくり走るメリットとデメリット【スロージョギングのすすめ】
速くなりたいと思う人ほど、普段のジョグのペースが高くなりがちです。サブ3を狙うランナーの場合は、ジョグでもキロ5分前後で走っているのではないでしょうか。でも、それってただ消耗しているだけで、ポイント練習の質を下げてしまっている可能性があります。ジョグは退屈なくらいゆっくりと走るべきです。
例えば川内優輝選手のジョグはキロ5分台です。キロ3分ちょっとでフルマラソンを走れる人がキロ5分台でジョグをしているのに、キロ4分ちょっとで走る人のジョグがそれよりも速いなんてどう考えてもおかしいですよね。トレーニングにはそれぞれ役割があり、いつも速く走ればいいというものではありません。
目次
キロ7〜8分のスロージョギングで毛細血管を育てる
ゆっくり走る利点は足に負担をかけないことにありますが、実はそれだけではありません。私たちの身体機能の中には、ゆっくり走ることでしか鍛えられない部分があります。それが毛細血管で、ゆっくり走ることで毛細血管が拡張されることがわかっており、ジョグはただのつなぎではなく、むしろメインのトレーニングなのだというのが最新の理論になっています。
これまでの理論ではポイント練習がメインのトレーニングで、超回復の理屈から中2日程度の休養が必要だから、そこに負荷の低いジョグを挟むのが常識でした。でも、実際にランナーを育てているのはジョグの方で、ジョグで毛細血管を育てることで、長時間走り続ける体ができあがっていきます。
なぜ毛細血管が育つといいのかというと、私たちの体は酸素を使って活動しているためです。酸素がないと筋肉は伸縮してくれません。さらに疲労物質を細胞から取り除くのも毛細血管の役割です。この毛細血管を拡張するというのは、1車線だった道路が2車線、3車線になるようなもので、より多くの血液を流すことができ酸素の供給をスムーズに行えるようになります。
その毛細血管の拡張をするのに最適なのが、ストレスを感じるくらいゆっくりのスロージョギングです。トレーニング不可はほとんど感じないかもしれませんが、それくらいのゆっくりのペースで2〜3時間走っていると、毛細血管が拡張して長距離でもしっかりと酸素を細胞に送れる体になるというわけです。
ゆっくり走ればケガのリスクも最小限に抑えられる
スロージョギングの目的は毛細血管を育てることにありますが、じっくりと筋肉を鍛えられるというメリットもあります。速いペースのジョグは着地するときに足に衝撃があり、それによってケガのリスクが上がります。ところがスロージョギングは歩くのに近い衝撃しかかからないので、膝などの関節を消耗しにくいといったメリットがあります。
ケガの原因のひとつとしてオーバートレーニングが挙げられますが、スロージョギングなら負担が極端に少ないので、オーバートレーニングによるケガを防止できます。蹴り出しも強引さがないので、プロネーションやサピネーションが起きにくいというのも、スロージョギングならではのメリットになります。
単純に月間走行距離を伸ばそうとすると、月間300kmくらいのところで壁を感じます。それ以上走り込むと、足が回復しきれずにケガをしてしまいますので、慎重にトレーニングメニューを組む必要がありますが、スロージョギングなら月間300kmでも500kmでもきちんと手順を追って行えば簡単に走れてしまいます。
旅ランと組み合わせれば退屈せずに継続できる
スロージョギングをするときに問題になるのが「退屈になる」ということです。これまでキロ5分台で走っていた人が、キロ7〜8分で走ろうと思うと、かなり退屈さを感じることになります。公園のような周回コースで2〜3時間走れる人は少数派。ですので、目的地を決めて走る旅ランがおすすめです。
例えば箱根駅伝のコースを半日かけて走ったり、山手線や環状線をぐるっと回ってみたりするのがおすすめです。スタート地点からワンウェイで行けるところまで走り、そこからは電車やバスを使って帰ってきましょう。往復だと考えると折り返したときに「まだ半分もある」というネガティブな思考になりがちなので、ポジティブ思考にするために「行けるところまで走る」にしましょう。
ただそうなると、できるだけ遠くまで走りたくなるのがランナーの性というもの。そこは気持ちをぐっと堪えて、キロ7〜8分のペースで自分の決めた時間で走り終えるようにしましょう。遠くまで走ることが目的ではありません。目的はあくまでも毛細血管を拡張して、走れる体を作ることです。目先に頑張った感に騙されないようにしましょう。
思い切って週末に旅行に出掛けて、旅先を走って観光するのもいいでしょう。観光をするので何度もストップすることになりますが、それでも移動をスロージョギングにすることで、体はきちんと仕上がっていきます。重たい着替えはコインロッカーやホテルに預けて、身軽な格好で観光して回りましょう。
まとめ
速く走れるようになるにはゆっくりと走る。これはかなり勇気のいる決断です。特にこれまで追い込むようなトレーニングをメインでやってきたシリアスランナーには、信じられないような方法ですが、少なくともポイント練習さえしっかりしていれば、ジョグをスロージョギングに変えても走力が落ちることはありません。
むしろスロージョギングを取り入れることで、これまで以上に走れるようになるのを実感できるはずです。ただ、実感できるまでには数ヶ月はかかりますし、その状態を維持できるようになるには数年かかります。ただ技術的に難しいことをするわけではなく、自分の心をコントロールするだけのこと。