30kmの壁の正体を知ろう!レース後半で失速しないためのポイント
「30kmの壁」という言葉を聞いたことがあるかと思います。トップランナーでも調整が上手くいっていないと30km以降に集団から遅れてしまったり、市民ランナーだと走ることができなくなり、そこから12kmがほぼ歩きになったという人もいます。
ここではそんな「30kmの壁」にぶつからないために、壁の正体と30km以降に失速しないためのポイントを解説していきます。100%回避できるわけではありませんが、その正体をわかっていれば見えない壁に怯える必要がなくなります。
目次
- ○ 「30kmの壁」の正体
- ○ グリコーゲンをレース途中で補うか脂肪を燃焼させる
- ○ 水分不足・ミネラル不足はエイドでスポーツドリンクを補給すればOK
- ○ 活性酸素の発生は普段の食生活で改善できる
- ○ まとめ:総合的に対処することが大切
「30kmの壁」の正体
まずは「30kmの壁」が何なのかについて説明します。30km前後で失速する理由は1つではありません。
・グリコーゲンが枯渇
・水分不足
・ミネラル不足
・活性酸素の増加
一般的に言われるのは体内のグリコーゲンが枯渇してしまうということですが、実はそれだけではなく、他にも水分不足やミネラル不足、活性酸素の増加などが要因として考えられます。これらが複合的に影響して、筋力や集中力が低下して走れなくなります。
ここで重要なのが「複合的」ということです。ひとつだけ対策をしてもあまり効果がありません。グリコーゲンが枯渇しないようにして、水分もミネラルも補いつつ、活性酸素が増えないようにする。このすべてを満たさないと「30kmの壁」が私たちの前に現れます。
グリコーゲンをレース途中で補うか脂肪を燃焼させる
体内にためておけるグリコーゲン量には限りがあり、トップアスリートでも30km程度で使い切ってしまいます。これは人間である以上は避けられないことで、回避する方法は2つしかありません。
・レース中に補給する
・脂肪を燃焼させてエネルギーにする
スタンダードなのがレース中の補給です。エネルギージェルなどを使って糖を摂取することで不足分を補います。ただしレース途中で不足したグリコーゲンをすべて補うのはほぼ不可能。700〜1000kcalを走りながら摂れる方法はありません。
そうなるとやるべきことは脂肪を燃焼させてエネルギーに換えることです。脂肪はかなりの高カロリーですのでマラソンくらいで尽きることはありません。ただし、スピードを出しすぎると脂肪を燃焼させることが難しく、さらに普段から脂肪を燃焼させやすい体にしておく必要があります。
自分でレース中にスイッチを切り替えられるわけではないので、普段から空腹時にトレーニングをするなどして、体が自然と脂肪をエネルギーに換えられるように準備しておく必要があります。
水分不足・ミネラル不足はエイドでスポーツドリンクを補給すればOK
水分不足を補う方法は、エイドで給水するしかありません。ただし水ではダメで、スポーツドリンクを飲むことです。そして1時間あたり700〜900mlの水分の補給が必要です。5kmを30分で走るならエイドごとに350〜450ml飲む必要があります。
実際にそこまで飲んでも吸収しきれないので、エイドごとにコップ1杯分をしっかりと補給することです。エイドの混雑を避けて給水しないという人もいますが、体内から水分だけでなくミネラルも抜けていますので、筋肉が正常な作動をしなくなり失速します。
水分補給は脱水症状を避けるためにするものと思っている人もいるようですが、それだけでなく体内をスタート時と同じコンディションに保つためにも必要です。この視点が抜けている人が多く、水分補給を甘く考えている人が多数います。
また、大事なのは失ったものを補うことですので、水ではなくスポーツドリンクを摂ってください。私たちの筋肉は電気信号で動いています。ミネラルが不足すると電気信号がきちんと伝わらなくなり、それが失速に繋がります。
「できるだけスタートラインに立ったときと同じ状態を維持する」。これが30kmの壁にぶつからないための基本です。
活性酸素の発生は普段の食生活で改善できる
少し厄介な問題が走ると体内に活性酸素ができるということです。活性酸素そのものは体にとって必要なものですが、マラソンのような負荷の高い競技をするにあたっては、疲労物質として走りを阻害するので、できるだけ発生を抑えなくてはいけません。
そのためには「ゆっくり走る」か「抗酸化作用のある物質で対抗する」しかありません。ゆっくり走れば脂肪を使って走れるので、自分に無理のないペースで走るのは選択肢としてありです。でも自己ベスト更新を狙うのは難しくなります。
記録を狙うにはある程度のリスクを負う必要があります。だとすればやるべきことは、活性酸素が発生しないように、抗酸化作用のある物質を体内に溜め込んでおくことです。例えば次のような食品に抗酸化作用があります。
・鮭
・鶏むね肉
・ブルーベリー
・ごま
・アーモンド(ナッツ類)
・緑茶
・ワイン
・ルイボスティー
この他にもビタミンCも抗酸化作用があり、体内に発生した活性酸素を取り除いてくれます。これらは体内に取り込んで保持できるものも多く、できるだけ日々の食生活に取り入れておきたいところです。逆にレース前日に摂取して、すぐに効果を得られるわけではありません。質の高いトレーニングを継続するためにも、抗酸化作用のある食べ物を意識して摂りましょう。
まとめ:総合的に対処することが大切
ここでご紹介した30kmの壁を超える方法は、1つだけ行ってもそれほど高い効果は期待できません。30kmで失速する要因は複合的で、少なくともご紹介した対処方法をすべて実行する必要があります。それが面倒だと思うなら記録更新は諦めて、ゆっくりと走りましょう。
ゆっくりと走れば脂肪をエネルギーにできるので失速はしません。でも過去の自分を超えていくことはまず不可能です。自分のポテンシャルを最大限に引き出して42.195kmを走りきりたいのであれば、レース中にグリコーゲンを補給し、エイドではスポーツドリンクを飲むこと。
そして普段の食生活に抗酸化作用のある食べ物を取り入れること。これらを意識したうえで、質の高いトレーニングを継続できれば、レースではおのずと結果がついてきます。面倒だと思わずに、しっかりと実行していきましょう。