アフリカ系ランナーは本当にフォアフットなのか
日本のランニングにおいて、現在は前足部から着地するフォアフットが主流になっています。その理由は2つあり、ひとつはBORN TO RUNがもたらしたベアフット系ランニングブームで、もうひとつが「アフリカ系ランナーは前足部で着地する」という考え方です。
世界のトップランナーのほとんどがケニア人やエチオピア人で、彼らがフォアフットで走っているから、速く走るならフォアフットというのが定着しました。でも、それは本当なの?というところから今日の話を始めていこうと思います。
目次
速く走らないならフォアフットは必須ではない
これまで何回か説明してきましたが、ナイキのランニングシューズの考え方として、ヴェイパーフライのようなレース用シューズはフォアフットで走ることを前提に設計され、ジョグ用はフラットもしくはやや踵側で着地するように作られています。
「フォアフットは体への負担が大きすぎる」という考えがベースにあり、キプチョゲなどのトップランナーでもジョグではフラットに近い着地になることから、シューズの用途に合わせた設計をしているわけです。
これだけでも、アフリカ系ランナーはフォアフットだという定説が崩れますが、実はこれをきちんと調査した論文があります。早稲田大学の修士論文ですが、そこではアフリカ系ランナーの裸足での着地方法と、着地方法ごとの優位性を調べています。
興味がある人はぜひ読んでもらいたいのですが、読むのが面倒だという人のためにかいつまんで説明します。キロ5分ペースで100人のケニア人ランナーに走ってもらった結果が次のようになります。
フォアフット:27%
ミッドフット:57%
ヒールストライク:16%
なんと半数以上がミッドフットで、フォアフットは27%しかいません。これだけでも「アフリカ系ランナーはフォアフット」だからという前提が崩れてしまいます。もちろんペースを上げればフォアフットになります。
実際に1500mや5000mの距離において、フォアフットランナーのほうレースでのパフォーマンスが高く、優位性があるということが論文にも書かれています。要するに速く走るならフォアフット、そうでないなら着地方法なんて何でもいいというわけです。
ケニア人長距離選手のランニング動作における着地方法と パフォーマンスの関係について
着地方法はランニングシューズで決まる
これも何度かお伝えしてきましたが、現代のマラソンにおいて、着地方法はランニングシューズによって決まります。ヴェイパーフライはフォアフットで走るように作られているので、そう走らないとシューズのポテンシャルを引き出せません。
反対にブルックスのランニングシューズの多くは、ヒールストライクを前提に設計されているので、フォアフットで走ると思うようなスピードで走れなかったりします。初心者用シューズは踵がドロップが大きくなっているので、そもそもフォアフットでは走れません。
どのような走りが自分に合っているかではなく、自分が履くシューズに合わせて走り方を変える。どうも不自然で好きではない考え方ですが、そういうわたしも、シューズによって着地方法を変えています。そうしないとシューズが活かされないし、走りが気持ち悪くなるから。
ただ、それができる人は限られています。誰にでもできることではないので、最適解としては自分の着地方法に合ったシューズを選ぶということになります。フォアフットで走るのであれば、フォアフット用に設計されたシューズ。ミッドフットで走るのであれば、ミッドフット用に設計されたシューズを選びます。
難しいのは普通の人にはフォアフット用なのか、ミッドフット用なのか、ヒールストライク用なのかわかりません。そのためにランニングショップの店員さんがいるわけです。大手メーカーならランニング解析をして最適なシューズを提案してくれます。
せっかくなので、1度くらいフォームの解析をしてもらうのもいいかもしれません。例えばミズノの店舗にはF.O.R.M.という装置が設置されています。有料サービスですが、こういうものを利用することで自分のクセや特長がわかり、シューズ選びの参考にもなります。
ランニングフォームはフォアフットでなくても問題ない
少し話が複雑になったので、1度重要なポイントをまとめておきます。
・スピードを出すならフォアフットが有利
・フルマラソンでは着地方法による優位性はほとんどない
・シューズごとに最適な着地方法がある
・シューズに自分を合わせるか自分に合ったシューズを選ぶ
こんなところでしょうか。
フォアフットのほうが着地をするときの衝撃が小さくなりますが、フォアフットだから速く走れるわけではありません。ケガのリスクが下がるだけです。ただ、それが自分の骨格にあっていなければ股関節などのケガにつながります。
またヴェイパーフライのようにフォアフット用に作られたシューズを履くなら、やはりフォアフットで走るしかありません。
でもフォアフットが正解というわけではありません。裸足ランナーで一生懸命フォアフットを習得しようとしている人がいますが、それを習得する必要性はまったくありません。自分が無理なく走れる着地方法ならなんでもいいんです。
日本人はマジメなので「これがいい」と言われると、懸命にそれを習得しようとしますが、ランニングというのはもっと自由なスポーツです。どんな走り方でも自分が気持ちよく走れればそれでいいんです。
世界トップクラスのアフリカ系ランナーでもそうしているわけですから。
まとめ
フォアフット走法が悪いとはいいません。利点は間違いなくあります。ですのでフォアフットで走ることを否定するつもりもありませんが、みんながみんなフォアフットになる必要はありません。
どう走ろうとそれぞれのランナーの自由であり、そしてあえて意識する必要もないことです。フォアフットを意識するあまりつま先走りになっているランナーがたくさんいますが、それではフルマラソンを走り切るのは無理です。
大事なのは自分に合った走り方で走り、そしてその走り方にあったシューズを選ぶということです。ミッドフットが合っているのに、タイムが出るからとヴェイパーフライを履いてフォアフットで走る。それは体に無理な力をかけることになりかねません。
ブームに流されることなく、自分に合った走り方を見つけていきましょう。RUNWAYではそのためのお手伝いをしています。もっと詳しく聞きたいという人は、ぜひRUNWAYのパーソナルトレーニングをお申し込みください。